伊藤正子『民族という政治』

出版情報

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副題ベトナム民族分類の歴史と現在
著者伊藤正子
出版社三元社
出版年2008
ISBN978-4-88303-234-1
価格¥3800(2008年)

内容

1960年代よりはじまったベトナムの民族確定作業の経緯、ドイモイ後に始まった民族確定見直し作業とその顛末を、各種の資料と先行研究、及びフィールド調査をもって描く。

国家によって決められた公定民族(本書では「国定民族」)という枠組みをめぐる、国家、地方行政府、当人達の政治的な関係性に注目し、上から民族を規定することの限界を明らかにしている。

目次

  1. 序論
    1. 第1節 本書の目的
    2. 第2節 本書の構成
    3. 第3節 研究手法
    4. 第4節 先行研究
    5. 第5節 ベトナム少数民族外観
  2. 第1章 ベトナム民主共和国における民族確定作業
    1. 第1節 ベトナム民族学の誕生
    2. 第2節 中国の民族識別作業
    3. 第3節 ベトナム民主共和国における民族確定作業
  3. 第2章 ドイモイ下の少数民族援助・優遇政策
    1. 第1節 1989年の共産党政治局22号決議とその背景
    2. 第2節 「135プログラム」の目的と対象
    3. 第3節 「135プログラム」の結果
    4. 第4節 「135プログラム」の課題
    5. 第5節 「135プログラム」第2フェーズ
  4. 第3章 21世紀の民族確定見直し作業
    1. 第1節 1999年の国勢調査とサブグループからの不満の噴出
    2. 第2節 声をあげたサブグループ ①カオランとサンチー
    3. 第3節 声をあげたサブグループ ②グオン
    4. 第4節 総括セミナーと国定民族成分リストの行方
    5. 第5節 声が届かないサブグループ
  5. 第4章 利用される「極少少数民族」オドゥ族
    1. 第1節 オドゥ族の居住状況
    2. 第2節 来歴をめぐる伝説
    3. 第3節 創られた「自称」
    4. 第4節 民族混淆状況と言語
    5. 第5節 オドゥ族の分類の歴史 ― “絶滅”の危機? ―
    6. 第6節 激増する「オドゥ族」
    7. 第7節 降ってわいたダム建設
    8. 第8節 民族別「優先」移住と家族の離散 ― 本当の危機 ―
    9. 第9節 オドゥ族への特別のプログラムとトゥオンズオン県の思惑
    10. 第10節 移住先でのオドゥ族と新たな民族間対立
  6. 結論 権益としての民族 ― 国家・地方政府・当人たち
  7. 資料
  8. 参考文献・インタビュー一覧
  9. あとがき
  10. 人名・事項索引

コメント

装丁と帯のコピー(「ある『民族』とされることが、人々になにをもたらし、なにを求めさせるのか」)がよくできており、本の内容をよく表しています。

公式ではない自称の民族名が現場レベルでは黙認されているというベトナムのやり方が不満のガス抜きになっている、という指摘が目を引きます。

また、ベトナムに「キン族の単一性」という大前提があることを、はっきりと(疑義をもって)示したのも面白い視点。

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2010/04/18 新規

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樫永真佐夫『東南アジア年代記の世界』

出版情報

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副題黒タイの『クアム・トー・ムオン』
シリーズブックレット《アジアを学ぼう》 2
著者樫永真佐夫
出版社風響社
出版年2007
ISBN978-4-89489-728-1
価格¥800(2007年)

内容

ヴェトナムの山地に居住する少数民族黒タイが伝承してきた年代記『クアム・トー・ムオン』。

記述された内容を精査し、その信憑性だけによって資料価値を判断するのではなく、内容分析から導き出される記述の意図、読誦される場の性質、現在に至るまでの経緯から、資料の特質を分析した著作である。

コメント

久々に読んだ直後のアップとなります。伝承を如何に読み解くか、という視点が民族学的で勉強になります。

ブックレット《アジアを学ぼう》シリーズは、松下国際財団の支援を受けた若手研究者を中心にして、彼らの研究を紹介するシリーズで、本作の含まれる第一期は7冊が刊行されました。本作はその1冊。

更新履歴

2008/02/06 新規

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