『越甸幽霊集』

表記

漢字名越甸幽霊集
音読みえつでんゆうれいしゅう
Quốc ngữViệt điện u linh tập

強引にカタカナ表記すると「ヴィエトディエンウーリンタップ」となる。

内容

1329年(陳憲宗・開祐元)、陳朝の官僚李濟川(Lý Tể Xuyên、リィ・テー・スェン)による神祇成立譚集。

各編は概ね、“神祇の略伝”、“霊験”、“称号付与の記録”という構成を取っており、対元戦中~後における陳朝の国家祭祀の記録でもある。

成立

李濟川の著した『越甸幽霊集』は1巻28編より成る。北属期の曾兌『交州記』、陳朝以前の杜善『報極伝』、黎文休『大越史記』などを参考にして書かれた。

ただし、後代20世紀初頭に至るまで各種の補遺・校訂が加えられており、異本は数多い。大まかには以下の4系統で、題名や内容に多少の異同をもつものが知られている。

  • 15世紀後半、黎朝の官僚阮文質が続集4編を追加し、再編集したもの。
  • 16世紀半ば(景興年間)、諸葛氏(名不明)が追加して41編にした『新訂較評越甸幽霊集』。
  • 18世紀(嘉隆・明命年間)、高輝耀による評が加えられたもの。
  • 1919年、呉甲豆が他の書物『嶺南摭怪』などを参考に重補・校訂した『越甸幽霊集録全編』。

版本

現在、主だった版本を校訂した『越南漢文小説叢刊第二集 神話伝説類 粤甸幽靈集録・新訂較評越甸幽靈集・越甸幽靈集録全編・越甸幽靈簡本』(1990)が存在する。

参考文献

  • 石井米雄(監修)、『ベトナムの事典』、同朋舎、1999、P85l
  • 陳慶浩・鄭阿財・陳義(主編)、『越南漢文小説叢刊第二集 神話伝説類 粤甸幽靈集録・新訂較評越甸幽靈集・越甸幽靈集録全編・越甸幽靈簡本』、學生書局・Publications de l'Ecole francaise d'Extreme-Orient、1990

コメント

ところで個人的には、小粋な樹木の精・應天化育元君(安朗元君)ちゃんが気に入っています。版本の時代が下るごとに、どんどんオシャレに(笑)。

気になるのは作者の名前。陳朝初期に定められた李姓の忌避はこの時代には撤廃されていたということ?

更新履歴

2007/03/31 更新

リニューアルに伴い、データをコンバートしました。ついでに少々書き換えました。